our Projects
our story
01
はじめまして「地元」
2021年、大学3年の春、私たちは新潟市の中心地から、少し南西にいったところにある岩室(いわむろ)温泉地域に引っ越してきました。暮らしはじめのころ、自分たちは地域の方とのつながりをつくろうと、必死に様々な大人たちに会いに行きました。そして気づいたのです。20年暮らした「地元」について、自分たちは本当に何も知らなかったのだと。住む場所や人脈を提供してくださった大恩あるOさんをはじめ、この3年間で本当に多様な活動や理想に熱意を燃やす方々にお会いしました。「地元」こそが、最高の実践と学びの場だったのです。
02
パンデミックとソロー『森の生活』
そもそもの始まりは、あのコロナ・パンデミックでした。東京の大学に在籍していた私たちは、授業の全面オンライン化によって学校に行くことがなくなりました。「こんなはずじゃなかった…」と、漠然とした不安と焦燥にかられる日々でした。そんな中で計画したのが「講演会 山崎亮×大学生」でした。学ぶ場がないなら、自分でつくればいい。東京に行けないなら、ここでできることをするんだ。自分たちを鼓舞するメッセージをこめました。(講演会の様子はweb上に記事や動画があるのでここでは割愛します。)
ヘンリー・D・ソロー著2016『ウォールデン 森の生活』今泉吉晴 訳 小学館
Henry David Thoreau, Walden; Or, Life in the Woods (1854)
そして、私たちは講演会を通じて1冊の本に出合うのです。それが、講師のコミュニティデザイナー山崎亮さんから紹介していただいた、ヘンリー・D・ソロー『森の生活』だったのです。ヘンリー・D・ソローは19世紀前半、産業革命が世界中に波及していく時代のアメリカで生きた人です。しかし、時代に叛逆するかのように、かれは自ら故郷コンコードの森に小屋をたて、そこで「暮らしの実験」と称して独自の生活をはじめたのです。ソローは「私たちは、あるきまったものや装置がないと人は生きられないと考えます」、しかし「生きるとは私だけの実験です…私たちは今すぐに、暮らしを新しくする何千という試みに挑戦していいのです」と書き残しました。
こうしたソローの思想に、私たちは深く影響をうけました。そして、「暮らし」の、「食っていく」ということの自分なりの意味を知るために、畑を求めて岩室に向かったのでした。
03
まちづくりってなに?
岩室では、ソローのように自分だけの暮らしを築いていくということのほかにも、「まちづくり」を実践するという目的もありました。地域の大人たちに話を聴きに行き、行事にも全部参加する意気込みでたずね、たくさんの方とつながることができました。岩室に越してきて1年目は、私たちの人生で一番多くの人と知り合った年になりました。同時に「若者」、「学生」という立場に向けられる様々な期待、要望があることも身に染みて感じました。そして気が付くと、実際は一人一人の意志や行動の集合体でしかない「地域」という目に見えない存在にからみ取られて、自分たちが何がしたかったのかが分からなくなっていたのです。ついにはその年の冬、疲れ果てて何もできなくなってしまいました。
家のなか、うつうつとした気持ちで私たちは話し合い、考えました。いくら「世のため、人のため」に何かをしようにも、自分の突き詰めた「好き」、「楽しい」を中心にしなければ、続けることができないのではないか。ひとりひとりが、自分の内側から湧き出るものを、もっと確信をもって実践していくことが「まちづくり」なのではないか…。私たちはめいめいに好きな事をしてみることにしました。
04
「住み開きシェアハウス」誕生!
自分の好きなこと。自分にとっての豊かさ。それを「世のため、人のため」につなげていくには…。「楽しいこと」と「よいこと」はどうやったらつながっていくんだろう?そんなことを考え続けてたどり着いたのが「シェア」と「住み開き」でした。「自分だけ」の暮らしのことを、少しずつ「他者」や「まち」にリンクさせていく。社会の問題を解決するには、その土壌として、「暮らし」の空間と「対話・共有」の空間が交差する場が必要だと思ったのです。こうして、ともやは「住み開きシェアハウス」を名乗るようになりました。
05
「岩室シェアハウス ともや」の夢
私たちは、「ともや」が社会を素敵に変えていく人たちみんなにとってのお家になれることを願っています。そして、「暮らし」と「対話・共有」の空間が重なり合う場所の重要性を広め、自分だけの「楽しい」暮らしと社会や環境にとって「よいこと」の両立を突き詰めて考える人を増やしていきたいと思っています。「誰もが今より格段に確信をもって生きる方がいい」とソローが提言したように、一人一人の意志と可能性ほど希望に満ちたものはないのではないでしょうか?21世紀の私たちを取り巻く問題は、複雑で、重苦しくて、正面から向き合うには大きすぎます。だから、まずは足元から、手を取り合える人を少しずつ増やしていく。楽しく暮らしを創っていく中で、困難や不安、悲しみを解きほぐしていくしかないと思うのです。私たちは自分の子供、孫に胸が張れる「暮らし方」を残したいと思っています。
2023.11.03
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